中小企業が人事制度を導入する前に確認した方が良いこと — 現在の人事制度の現状分析のすすめ② 等級制度の現状分析 —

人材管理方針(経営方針の実現に向けた人材マネジメントの考え方)の現状を確認・整理した後、次に取り組むべき重要なテーマが、等級制度の現状分析です。等級制度は、人事制度の中でも中核となる仕組みであり、「会社として、誰にどのような役割や責任を期待しているのか」「どのような人材を中核として育成していきたいのか」を具体的に示すものです。

等級制度は、昇進・昇格の判断基準であると同時に、人材の配置や育成、評価、報酬の考え方の前提にもなります。そのため、等級制度のあり方が曖昧なままでは、いくら評価制度や報酬制度を整えようとしても、制度全体の一貫性が保てません。

中小企業では、明確な等級制度を設けていない、あるいは役職名は存在するものの、その役割や責任が十分に定義されていないまま運用されているケースが少なくありません。また、過去の組織規模や事業内容を前提として作られた等級構造が、現在の事業戦略や人材構成に合わなくなっていることも多く見受けられます。

その結果として、「管理職という肩書きはあるが、実質的なマネジメント機能を果たしていない」「昇格の基準が不明確で、従業員の納得感が低い」「年齢や勤続年数に応じて自動的に昇格していくような運用になっている」といった状況が生じやすくなります。

こうした実態を十分に把握しないまま、新たな等級制度を設計してしまうと、見た目としては制度が整ったように見えても、現場の実態や人材の状態と乖離した制度になり、かえって混乱や不満を招く恐れがあります。そのため、まずは現在の等級制度が、どのような考え方で作られ、どのように運用されているのかを丁寧に洗い出すことが重要です。

<<確認/点検する内容>>

等級制度の現状分析では、等級(役職)の構成や人数バランス、年齢構成、各等級で期待されている役割や責任がどの程度明確になっているか、といった点を確認していきます。併せて、等級間の違いが説明できる状態になっているか、従業員が自身の成長やキャリアをイメージできる構造になっているかも重要な視点です。

また、仕事の内容や求められる能力が大きく異なる職種について、職種や職掌ごとに適切な区分がなされているかどうかも確認します。過去の区分をそのまま踏襲した結果、現在の事業戦略や人材の実態に合わなくなっていないか、専門性を高めたい人材のキャリアの受け皿が用意されているか、といった点も重要な論点となります。

さらに、昇格や降格に関する考え方や運用が、一定程度整理されているかどうかも確認します。すべてを細かくルール化する必要はありませんが、判断の軸やプロセスが不透明なままでは、「なぜ昇格したのか」「なぜ昇格できなかったのか」が説明できず、評価や処遇に対する不信感につながりやすくなります。

こうした点を整理していくことで、経営者が本来期待している各等級の役割と、実際に等級ごとに担われている役割とのズレや、将来に向けた人材育成・キャリア形成上の課題が、徐々に明らかになっていきます。例えば、「名ばかり管理職が多い」「等級が細かすぎて違いが説明できない」「昇格しても役割が変わっていない」「専門性を高めたい人材の成長ルートが見えない」といった問題が、具体的な形で言語化されていきます。

等級制度の現状を丁寧に洗い出すことは、「どの等級に、どのような人材が、どの程度存在しているのか」「今後の事業展開に対して、その構成は適切か」といった人材ポートフォリオを見直す作業でもあります。その結果として、強化すべき等級層や、見直しが必要な役割定義、職種区分のあり方など、次の検討ステップに向けた具体的な課題が整理されていきます。

このようにして等級制度の現状を把握したうえで、次のステップとして評価制度や報酬制度の現状分析へと進んでいくことで、人事制度全体を一貫した考え方で見直していくことが可能になります。等級制度の現状分析は、人事制度設計を成功させるための重要な土台づくりであり、拙速に制度設計へ進まないための欠かせないプロセスと言えるでしょう。

なお、本コラムでは考え方の全体像をご紹介していますが、実際の現状分析では、より具体的な視点や質問項目を用いて整理していきます。具体的な質問項目や進め方に関心のある経営者・人事責任者の方は、お気軽にお問い合わせください。

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