中小企業が人事制度を導入する前に確認した方が良いこと— 現在の人事制度の現状分析のすすめ⑤ 連載①〜④についての補足 —
中小企業が人事制度を導入・見直ししようとする際、「評価制度」や「報酬制度」といった、目に見えやすく分かりやすい部分から検討を始めてしまうケースは少なくありません。しかし、人事制度はそれぞれが独立して機能する仕組みではなく、経営の考え方や人材に対する期待を一貫した形で表現する、ひとつの体系として捉える必要があります。
人事制度の根幹にあるのは、「自社はどのような人材を必要とし、どのような行動や役割発揮を期待しているのか」という人材管理方針です。この考え方を土台として、役割と責任を整理する等級制度、行動や成果を評価する評価制度、そして最終的にそれらに報いる報酬制度が連動することで、はじめて人事制度は実効性を持つものとなります。
本連載(現在の人事制度の現状分析のすすめ①〜④)では、人事制度を新たに設計・導入する前に必ず立ち止まって確認しておきたい「現状分析」に焦点を当て、人材管理方針、等級制度、評価制度、報酬制度の4つの観点から、現行制度の状態をどのように整理・点検すべきかを解説してきました。制度を「作る前」に現在の姿を正しく把握することが、形骸化しない人事制度づくりの第一歩である、という点が本連載を通じた一貫したメッセージです。
具体的には、人材管理方針においては経営としてどのような人材を求めているのかという根本的な考え方を、等級制度では役割と責任が整理されているかを、評価制度では行動や成果を適切に捉えられているかを、そして報酬制度ではそれらが処遇として正しく反映されているかを確認してきました。
これらを通じて共通して言えるのは、人事制度の課題は「部分最適」では解決しないということです。評価項目を増やしても報酬とのつながりが弱ければ従業員の納得感は高まりませんし、等級を細かく定義しても、人材管理方針が曖昧なままでは制度は形だけのものになってしまいます。重要なのは、それぞれの制度が「何のために存在しているのか」を、一貫した考え方のもとで整理できているかどうかです。
現状分析を行うと、多くの中小企業では「制度が存在しない」ことよりも、「制度はあるが、各制度の意図や役割が整理されていない」ことが課題として浮かび上がります。これは、事業の成長や環境変化に応じて、その都度必要な制度やルールを積み重ねてきた結果でもあり、決して特別なことではありません。だからこそ、拙速に新たな制度設計へ進むのではなく、まずは現在の人事制度を棚卸しし、ズレや矛盾を言語化するプロセスが重要になります。
いずれの制度も単独で成り立つものではなく、「どのような人材を求め、どのような行動や役割を期待し、どのように評価し、どのように報いるのか」という一連の流れとして、整合的に設計・運用されていることが、人事制度全体の納得感と実効性を左右します。
現状分析を進める中で、「制度は一応整っているが、意図や役割が曖昧になっている」「評価や報酬が、経営として本当に重視したい行動と結びついていない」といった違和感を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。こうした違和感は、人事制度を見直すべき重要なサインであり、放置したまま部分的な制度改定を行うと、かえって現場の混乱や不信感を招くおそれがあります。
一方で、実際に自社の制度を客観的に点検しようとすると、「どこから手を付ければよいのか分からない」「専門的な観点での整理が難しい」と感じるケースも少なくありません。そうした経営者や人事責任者の方に向けて、現在の人事制度の状態を簡易的に整理・把握するための「人事制度ミニ診断」をご用意しています。
本連載でご紹介してきた現状分析の考え方をベースに、制度全体のつながりや課題の方向性を整理するための診断です。より具体的な確認項目に基づいて自社の状況を把握したい方や、今後の人事制度見直しの方向性を検討したい方は、ぜひお気軽に「人事制度ミニ診断」についてお問合せください。
人事制度の現状分析は、単なる制度改定のための準備作業ではありません。それは、経営として「人に何を期待し、どのように組織を成長させていきたいのか」を改めて問い直す機会でもあります。本連載が、その第一歩として、自社の人事制度を見つめ直すきっかけとなれば幸いです。

